江戸時代の医者である貝原益軒は85歳という当時の平均寿命の2倍以上を生き抜いた。『養生訓』は幼少期は虚弱体質であった貝原益軒が83歳になるまでの実体験に基づき健康法を解説した本である。
さて、この本を見てると気になる文章を発見した。
さし身、鱠(なます)は人により斟酌(かんしゃく)すべし。酢過ぎたるをいむ(忌む)。虚冷の人はあたため食うべし。鮓(すし)は老人・病人食うべからず、消化しがたし。殊に未熟の時、又熟し過ぎて日をへたる、食うべからず。ゑびの鮓(すし)毒あり。うなぎの鮓(すし)消化しがたし。皆食うべからず。
養生訓・和俗童子訓(岩波文庫)
『ゑびの鮓(すし)毒あり』と書いてある。
エビの寿司に毒があるだって?????
『ゑびの鮓=エビの寿司』であるのは自明だと思うが一応考えてみると
『ゑび』は歴史的仮名遣いをしているだけで通常思い浮かぶ『エビ』と同一なのは分かる
『鮓』は『鮓(すし)は老人・病人食うべからず、消化しがたし。殊に未熟の時、又熟し過ぎて日をへたる、食うべからず』とあることから回転寿司とかで出てくる通常想像する寿司ではなく、『なれずし』のようなものである可能性があるが、何れにしても寿司であることには変わりがない。
今現代人が通常生きていてエビの寿司に毒があるなどと言われて了解することはない。では何故貝原益軒はエビの寿司に毒があると養生訓に書いたのであろうか。
ここで二つ推測を立てた
仮に、養生訓の云う寿司が、なれずし、だとすると料理を作った後しばらく放置することになる。其の間にエビ由来の特異な細菌が繁殖して食べると悪影響を及ぼす説
脚気というものがある。脚気はビタミンB1の不足による病気であり心不全で足のむくみ、神経障害で足のしびれたりする病気である。脚気は江戸時代に流行した病気で別名江戸わずらいとも呼ばれる。エビと何の関係があるんだと思ってしまうが実はエビにはチアミナーゼというビタミンB1を破壊する酵素が含まれている。つまり、もともとビタミンB1が少なくて脚気になっている人たちにとってエビの酵素でビタミンB1を破壊しておきながら白米の糖質の代謝でビタミンB1を必要とするエビの寿司は脚気を助長させるまさしく毒であると言える
どっちかというと下の方が信憑性が高い。
今でなお、真しやかにエビには毒があると言われているが、原因は養生訓からなのではないか。エビの寿司には毒があると言われたのはチアミナーゼというビタミンB1を破壊する酵素のせいなのではないか。
江戸時代の人たちからすると『チアミナーゼ』『ビタミンB1』は知らない概念であるし、現代人からすると『エビの寿司には毒がある』は知らない概念である。昔に書かれた本だから、今の常識とは違うから。そんな理由で昔の本を読まない、拒否する理由になるだろうか。そこに新しい発見があるかもしれない。昔の人は言った。温故知新と。
養生訓にはエビの寿司の話だけではなく、食後に運動しろと、今で言う食後血糖値に通ずる話もしている。健康を気にしている人間なら一度読んでみて新しい発見がないか探してみると良いかもしれない
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